日本の英語教育では、英語ライティングの学習量が十分ではありませんでした。
学生時代英語が得意だった方でも、ライティングにはハードルを感じるという方は多いのではないでしょうか。
母国語でも書くのが難しい学術論文を、初めて英語で書くことは容易ではありません。
この記事では、初めて英語論文を書く方向けに、英語論文の特徴や英語論文執筆時の注意点、英語論文を書きやすくするためのヒントをお伝えします。
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そもそも日本語の論文と英語論文では、書き方にどんな違いがあるのでしょうか。
主な相違点を以下でご説明します。
日本語論文では、十分な説明をしてから最後に結論を書くというのが従来の書き方でした。
英語論文では結論を先に書き、その後で根拠や理由を書きます。
英語論文全体においても最初の部分で結論に触れることが多いですし、各段落(パラグラフ)においても結論(要旨)を最初に書きます。
英語論文の一般的な構成は、「IMRAD(イムラッド)」形式に基づいています。
「IMRAD」は、”Introduction(序論), Methods(方法), Results (結果) and Discussion(考察)”の各単語の頭文字を取った略語です。
それぞれの構成部分では以下の内容を書きます。
【IMRAD形式の英語論文構成】
構成部分 | 内容 |
---|---|
Introduction(序論) | 研究の背景、先行研究の紹介、研究の目的など |
Methods(方法) | 調査や実験の方法 |
Results(結果) | 調査や実験の結果 |
Discussion(考察) | 結果の考察 |
上記のように一般的な英語論文の構成で最初に書くのは、研究の背景や目的を記す”Introduction”「序論」。
日本語の論文では「序論」に研究の結果を含めない場合もありますが、英語論文では「序論」で研究結果についても簡単に説明することが一般的です。
英語論文は「パラグラフライティング」で書きます。
パラグラフライティングとは、1つのパラグラフを1つのトピックで構成し、パラグラフを組み合わせて文章を作り上げる技法です。
各パラグラフ内において、そのパラグラフの要旨(結論)を表す「トピックセンテンス」は、通常1文目に書くものです。
トピックセンテンスの次に、詳細や具体例などを示す複数の「サポートセンテンス」を書きます。
英語論文で書く主張や結果は、十分な根拠と共に示すことが求められます。
たとえば、何か主張をした際にはその理由や根拠となるデータを明示し、実験結果を示す時には実験の前提条件や方法を明示しなければなりません。
また、先行研究を紹介する際も、参考文献を決められた方法で明示することが必須です。
日本語の論文でも、もちろん根拠は必要とされますが、英語論文ではより厳格に求められます。
初めて英語論文を書く際は特に、根拠や裏付けのない主張や結果は書かないように気を付けましょう。
同じ英語でも、日常英会話と英語論文では使われる構文や表現が異なります。
以下では、初めて英語論文を書く方向けに、英語論文はフルセンテンスでフォーマルな表現を用いて書くことをご説明したうえで、英語論文でよく使われる構文や表現をいくつかご紹介します。
日常英会話では主語や動詞が省略されることがありますが、英語論文ではフルセンテンスで書きます。たとえば、日常英会話では、
It is nice weather.
(良い天気だ)
の主語と動詞(It is)を省略して、”Nice weather.”などと言うことがありますが、英語論文ではこのような省略はせず、すべてフルセンテンスで書きます。
英語論文はフォーマルな英語で書きます。
フォーマルな英文では、短縮形を使いません。
たとえば、”isn’t”などのように短縮せず、”It is not ….”と書きます。
また、同じ意味を表す英語表現でカジュアルな表現とフォーマルな表現がある場合は、フォーマルな英語表現が使われます。
例として、「・・・を調査する」という意味の英語表現には、”look into …”などの「句動詞」や”investigate…”などの動詞があります。
「句動詞」は主に会話などで使われるカジュアルな表現です。
一語で表す動詞の方がフォーマルな表現であるため、英語論文では”investigate”の方が使われます。
英語論文では、以下の例のように、専門分野を問わずよく使われる構文があります。
【英語論文で使われる構文の例】
Introduction | 序論 | Recently, there has been increasing interest in … (近年…にますます注目が集まっています) Recent research has shown that … However, there is a lack of research in the field of … This paper analyses the effect of … |
Methods | 方法 | This study employs a … methodology to … (本研究は…方法を採用します) |
Results | 結果 | The table X shows an overview of … (表Xは…の要約を示しています) |
Discussion | 考察 | The most important finding is … (もっとも重要な結果は…) |
英語論文の各構成部分別に、よく使われる構文を覚えておくことで、初めて英語論文を書く方でも随分と書きやすくなるでしょう。
英語論文では、いわゆる「つなぎ言葉」が多用されます。
「つなぎ言葉」とは、文と文、段落と段落の関係を示す副詞または副詞句で、英語論文における論理の流れを示す大事なフレーズになります。
下の表は、つなぎ言葉の代表的な例を機能別に挙げています。
【つなぎ言葉の例】
機能 | 例 |
---|---|
逆説 | However(しかしながら) |
追加 | in addition(さらに) |
例示 | for example(たとえば) |
対比 | on the other hand(他方では) |
結果 | As a result(その結果) |
理由 | Therefore(それゆえ) |
結論 | in conclusion(結論として) |
つなぎ言葉は、文頭でカンマと共に用いられるのが一般的です。
たとえば、「例示」のつなぎ言葉”for example”を例に取ると、以下の文のようになります。
For example, A is caused by B.
(たとえば、AはBにより引き起こされます)
初めて英語論文を書く時は、この「つなぎ言葉」をまず覚えるのがおすすめです。
ただ、いっぺんにたくさん覚えても自分で使いこなせなければあまり意味がありません。
まずは「逆説」や「例示」など機能別に1つずつ覚えて、積極的に使うようにしましょう。
慣れてきたら、他の表現を徐々に増やしていくと良いでしょう。
初めて英語論文を執筆する際は、以下のポイントに留意して書きましょう。
前述したように、英語論文は一般的に「IMRAD」の構成にしたがって書きます。
ただ、専門分野によって論文構成が異なる場合があります。
初めて英語論文を書く方は、その専門分野で既に出版されている論文を参考に、その専門分野における標準的な論文構成を知っておきましょう。
英語論文の構成が決まったら、各構成部分の中でどんな内容を書くのか箇条書き等で書いていきます。
その箇条書きが各パラグラフのトピックセンテンスになるよう意識して書くと、効率よく英語論文執筆を進められます。
あとは、パラグラフごとにサポートセンテンスで肉付けをしていけばよいのです。
英語論文の本文を書き始めた後も、常に論文構成を意識しながら書き進めましょう。
英語論文は通常長い文章になります。
特に初めて英語論文を書く場合、文章を書くことに集中している間に、全体の構成の中でどこを書いているのか見失いそうになる時があるかもしれません。
ワードの「ナビゲーション機能」を使うなどして、常に論文構成を意識しながら書くと良いでしょう。
また、パラグラフ内では、「1パラグラフ1トピック」の原則を守り、トピックセンテンスから外れた内容を書かないことに留意します。
初めて英語論文を書く方の中には、英語論文は「洗練された英語表現や複雑な構文を使うもの」というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。
実は、英語論文の英文は「簡潔さ」(conciseness)が重視され、冗長な表現は避けられる傾向にあります。
一文の単語数も20単語くらいまでと、長くなり過ぎないようにします。
日本語でもそうですが、各専門分野で普遍的に使われている専門用語があるので、それとは異なる類義語を使ってしまうと読者に伝わりにくい英文になってしまいます。
初めて英語論文を書く際は、その分野でよく使われている英語の専門用語を文献を読むなどして把握しておき、その専門用語に統一して書くようにしましょう。
“Methods”のセクションは、「他の研究者がその調査・実験を再現できるように」書くべき、と言われています。
英語論文で“Methods” (方法)が明確に書かれていなければ、調査結果や実験結果の妥当性が証明できません。
一つ一つの材料やプロセスをまずは箇条書き等で書き出し、漏れがないように「時系列」で詳細に書きましょう。
研究で採用した方法は調査や実験を行う前に決まっていることが多く、またどんな内容を書くべきか迷う部分が少ないため、“Methods”の部分は英語論文作成において真っ先に執筆する方も多いようです。
このため、初めて英語論文を書く方にとって、“Methods”は比較的取りかかりやすい部分と言えます。
なお、もし他の論文で既に紹介されている方法を採用した場合は、参考文献セクションでその旨明示すべきことに注意しましょう。
英語論文では、”Results”(結果)はもちろんのこと”Discussion”(考察)も非常に重要な部分です。
他の研究との比較において、当研究結果がどのような点で異なりどんな意味合いを持つのか、今後さらに研究を深めるべき部分はどこなのかなどについて深掘りして書きましょう。
英語論文をジャーナルに投稿する予定がある場合、ジャーナルの投稿規定を執筆前に十分読み込んでおきましょう。
投稿規定は多岐にわたって事細かに決められていることもあります。
特に初めてジャーナルに英語論文を投稿される場合は、執筆中も必要に応じて随時投稿規定を参照し、投稿前にもう一度確認することをおすすめします。
既にお話したように、英語論文において参考文献を正確に記載することは必須です。
海外の大学などで英語論文の書き方を学ぶ際、真っ先に習うのは”plagiarism”(剽窃)を避けること。
「剽窃」に当たる不正行為をした場合、研究者として大きなダメージを受けるだけでなく、「著作権法違反」に該当する可能性もあります。
意図的に既存文献等から盗用してはいけないことは言うまでもありませんが、初めて英語論文を書く場合、参考文献を正確に記載しなかったために本人が意図しなくても「剽窃」と見なされるケースもあるので注意が必要です。
参考文献を記載する際は、「直接引用」と「間接引用」では本文中の記載方法が異なることに注意しましょう。
一般的に、文献の内容を要約したりパラフレーズしたりして引用する「間接引用」の場合は、「著者名」と「出版年」を明示します。
【間接引用の例】
… (Brown, 2005)
文献の表現をそのまま用いる「直接引用」の場合は、引用した部分を”…”(ダブルクオテーションマーク)を使って囲み、直後に「著者名」「出版年」に加えて「所在ページ」も明記します。
【直接引用の例】
“…”(Brown, 2005, p100)
なお、英語論文の参考文献は膨大な数になることもしばしばです。
「EndNote」(エンドノート)を始めとする便利な「文献管理ツール」もあるので、必要に応じて利用を検討すると良いでしょう。
母国語でも、文章を書いた後は見直しをすることが多いと思います。
英語論文をジャーナルに投稿する前には、特に念入りな見直しが必要です。
初めて英語論文をジャーナルに投稿する方が、投稿前に確認すべきポイントを以下でご説明します。
まずチェックすべきは、英語自体のミスがないかどうか。
日本語の文章でもそうですが、気を付けて書いたつもりでも、後で見直してみるとミスが見つかるものです。
英語自体のミスとして、スペリングミスと文法上の誤りがあります。
スペリングミスは、ワードの自動修正機能を使うことで大分減らせます。
ただし、自動修正機能を使うと、大文字で始めるべき固有名詞が小文字に直されたり、固有名詞と認識されず別の単語のスペリングに修正されたりすることがあります。
やはり自分の目でも確認することが大切です。
文法については、正しい時制が使われているか、日本人が間違えやすい句読点(カンマ、ピリオド、コロン、セミコロンなど)などについてチェックしましょう。
名詞の単数形・複数形、主語と動詞の一致(単数形の主語には単数動詞など)なども間違えやすいポイントです。
英語論文において「キーワード」は繰り返し書いてもかまいませんが、「接続詞」や「つなぎ言葉」などで同じ表現ばかりが使われていると単調な文章になってしまいます。
「パラフレーズ」する(違う表現に置き換える)ことを検討しましょう。
簡潔明瞭に書かれているかをチェックするには、英語論文の読者の目に立って読み直すことが大切です。
たとえば、代名詞が何を指しているか不明瞭な場合は、名詞に置き換えたりして第三者である読者がすぐに内容を理解できる文章を目指します。
また、同じような内容の文を2つ続けて書いていた場合、1文に合体して重複する部分を削除するなどして簡潔な文にしましょう。
ジャーナルの投稿規定が守られていない場合、それだけで論文がリジェクトされる可能性もあります。
せっかく初めて書き上げた英語論文。
内容が素晴らしいにもかかわらず、ルールが守られていないと言う理由だけでリジェクトされるのは非常にもったいないことです。
投稿規定は念入りにチェックしましょう。
前述したように、参考文献の記載漏れや誤った記載の仕方は、意図せぬ「剽窃」につながります。
参考文献の記載漏れがないよう、慎重に確認しましょう。
また、参考文献が投稿規定に従った書き方をしているか、直接引用または間接引用の書き方が正しいかなども確認します。
もし書き上げた英語論文にジャーナルの査読者が理解できない部分がある場合、英語論文の内容が優れていたとしてもリジェクトされかねません。
英語論文を書くのが初めての方や慣れていない方は、第三者に添削してもらうことを特におすすめします。
専門分野に詳しい英文添削会社に添削を依頼すると、英語自体のミスの修正だけにとどまらず、以下のようなメリットがあります。
ネイティブの校正者に見てもらうと、英文自体がブラッシュアップされます。
英語の誤りが修正されるだけでなく、より適切な表現に修正し英文を簡潔にすることにより、読者にとって読みやすい英文になります。
自分が書いた英文をネイティブの校正者に添削してもらうことで、
などの傾向がつかめます。
次に英語論文を書く時に自分が英語でミスしやすいポイントに気を付けながら執筆することができ、英語論文を書くのが初めてという方には特におすすめです。
英文添削会社に依頼すると、英語論文で使える英語をたくさん学ぶことができます。
自分が書いた文章を基に、より自然で適切な表現や構文を提示してもらえるので、どのような文脈でどの表現や構文を使えば良いのか分かり、英語表現力がアップします。
自らの専門分野に強い英文添削会社に依頼すると、自分が書いた英文をネイティブに自然な英文に修正してもらえるだけではありません。
専門分野に詳しいネイティブが校正を担当するため、英語論文の内容を踏まえ、その専門分野においてふさわしい英文へ修正してもらうことができます。
一般の英文添削会社に依頼すると、英文自体のミスや冗長な表現が修正されるだけというのが一般的です。
一方、専門分野に詳しい英文添削会社に依頼すると、投稿予定のジャーナルに英語論文がアクセプトされやすいかという観点からも見てもらうことができます。
この記事では、初めて英語論文を書く方向けに、
をご説明しました。
また、初めて英語論文を執筆する際の注意点と、ジャーナル投稿前のチェックポイントを解説し、英文添削業者に依頼するメリットもご紹介しました。
研究者の方が初めて英語論文を書く際には、英語論文のルールを知り、よく使われる英語表現を学ぶことが大切です。専門分野の文献をたくさん読むことも、英語論文執筆に役立ちます。
ジャーナル投稿前には、専門分野に詳しい英文添削業者への依頼を検討することをおすすめします。
添削を受けることで自身の英語表現の幅が広がり、英語論文を書くコツがつかめてくるでしょう。
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