英語科学論文の書き方|基本ルールとよく使う表現方法の解説

英語で科学論文を初めて書く人にとって、思うように英語で文章が書けない、どのように論文を書いたらよいか分からないという人が多いのではないでしょうか。

英語と日本語では文章の書き方が異なるので、英語の発想力をもって文章作成する必要があります。
また、英語の科学論文には基本となるルールやマナーも存在します。

この記事では英語科学論文の書き方と基本ルールについて解説していきますので、論文作成の参考となれば幸いです。

思い通りに科学論文が書けない原因

英語で思い通りに科学論文が書けない原因としては、日本語の文章との違いや英語論文のルールに沿っていないことが考えられます。

具体的にどういった点でつまずいてしまうのか、解説していきましょう。

英語と日本語の文章の違い

英語に慣れていない方のなかには、文章を書く際に日本語で文章を考えてから英語に翻訳して書き直す人もいるでしょう。

しかし、この方法では時間がかかりますし何より意図が伝わらない文章になってしまいます。

そのまま翻訳しても違和感のある文章になってしまう理由としては、英語と日本語では文章の構造が大きく違うためです。

その為、日本語で考えた文章をそのまま英語に翻訳しようとすると、直訳文となってしまい分かりづらく読みにくい文になります。

もうひとつの理由としては、日本語と英語では文章の語順が違うことが挙げられます。

英語は大事なことを最初に述べる「結論ファースト」だと言われますが、日本語とは真逆の構造になっています。

もっとも重要な情報がまず先に来るということを意識しましょう。

また、これは文章だけでなく段落の構造にも言えることです。
日本では小学校で「起承転結」を作文の基本構成として習いますが、英語には当てはまりません。

重要な情報は先に記載して、あとから付加的な情報を書く意識をすると英語らしい文章になり、意図も明確にできるでしょう。

英語論文のルールに沿っていない

英語論文には決まったルールやマナーが存在します。
このルールに沿っていないと論文全体として統一感のないものになり、読みづらい印象を与えてしまいます。

また、英語論文のルールは一般的に認知されているものだけでなく、投稿先のジャーナルによっても規定が定められているので必ず確認しましょう。

例えばページ数や図表の書き方、論文の書式などは投稿先によって規定があります。
これらは最低限守るべき内容として心得ましょう。

英語論文に共通する書き方のルール

英語論文に共通する書き方のルールについて、基本となる項目を解説していきます。
海外の研究者達にも一般的に認知されている内容になりますので、是非おさえておきましょう。

文章では三人称か受動態を使う

英語論文では一人称は使わずに、三人称か受動態を使用するのが一般的です。
「I thought about ~」のように「I」ではじまる文章は不適切となるので避けましょう。

文章は長くなりすぎずシンプルに

難しい内容を詳しく説明しようとすると、文章が長くなりがちです。
英語論文では明解で簡潔な文章が好まれますので、長くなりすぎないように注意しましょう。

適切な長さとしては、1つの文章につき20語くらいが目安となります。
短くて簡潔な文章を心がけましょう。

段落の書き方

日本語で文章を書く場合、段落の一番最初を一文字空けて「字下げ」を行いますが、英語の論文の場合は次の2つのスタイルがあります。

  • 字下げは行わないが、段落と段落の間は一行空ける
  • 最初の段落は字下げしない、段落間は行空けしない、2つ目の段落から5字下げる


上記の2つのスタイルから1つ選んで使用することになります。
日本語にはない書き方になりますので、是非覚えておきましょう。

適切なフォントを使用する

英語で論文を書く際には「Times New Roman」の「12pt」で書くのが一般的です。
日本語向けのMS明朝や游明朝などのフォントは使用しないでください。

Times New Romanは英語に適したフォントになっているので、英語を表示した際に整然として見た目が美しくなります。
多くのジャーナルで指定されているフォントになります。

正しいスペルで書く

スペルミスをしないことは絶対ですので、執筆後は何度も確認を行いましょう。

もうひとつ注意する点として、アメリカ英語とイギリス英語でスペルが異なる点です。
どの英語の種類で書けばよいのか、投稿を行うジャーナルで使われている英語の種類を必ず確認しましょう。

ちなみに国際的なジャーナルではアメリカ式を一般的には使用しています。

フォーマルな表現を使用する

論文では日常的に使っている言葉ではなく、フォーマルな表現を使います。
例えば、以下のような表現となります。

「Don’t」→「Do not」
「but」→「however」
「and」→「moreover」
「really」→「definitely」

英語論文を書く際には正しい文語で書けるように意識しましょう。

動詞の時制について

論文全般に言えることですが、特に科学論文を書く際には動詞の時制を正しく使うことが重要です。
時制を間違って使用すると、誤解が生じてしまい論文が明確なものでなくなってしまいます。
科学論文では主に以下の時制が使われています。

  • 単純現在形(属性、通常の状態、行為を記述する)
  • 単純過去形(過去の出来事、状態を報告する)
  • 現在完了形(執筆時点で完了していない過去の状態や行為を報告する)
  • 過去完了形(ある時点よりも以前に起きた出来事や行為を報告する)


論文の各構成でどのような時制が使われているのかについては、次項の「英語論文の構成」で解説していきます。

科学の英語論文の基本

科学の英語論文では今までの研究してきた研究結果を発表し、読み手を説得させる必要があります。

想定される読み手としては、同じ分野で研究をしている科学者であったり関心を持っている科学者であったりすることが考えられます。

研究内容を正しく的確に伝えることのできる適切な論文の書き方が必要となるでしょう。

英語論文の種類

論文のことを英語では「essay」や「paper」と呼びます。

「essay」は小論文のようなイメージで、社会学や文学、教育学などのいわゆる文系の分野の論文がこのかたちになります。

「paper」は学会などで発表するような論文を指すのが一般的です。
科学的根拠に基づいた、実験や研究結果を報告する科学論文は「paper」になります。

「essay」と「paper」では論文の構成が異なり、「essay」は構成に自由度がありますが「paper」では細かく構成が決まっているのが特徴です。

英語論文の構成

科学の英語論文ではほとんどの場合、構成が以下のように決まっています。
それぞれの構成の内容について順番に解説していきましょう。

Title タイトル
Abstract 要約
Introduction 序論
Material and Method 材料と方法
Results 結果
Discussion 考察
Conclusions 結論
Acknowledged 謝辞
Reference 参考文献
Appendices 付録

title タイトル

「Title」は最初に人の目に触れる部分であり、どのような内容が記載されているかを判断する重要な箇所と言えます。
短すぎたり長すぎたりすると必要な情報が相手に届かない可能性もあります。
「Title」は10~12語におさめるのがちょうど良いでしょう。

その他に気をつけるポイントとして、以下にまとめました。

  • 簡潔であること
  • 論文の需要なキーワードを入れる
  • 疑問形にしない
  • 略語は使用しない
  • 曖昧な表現はしない


Abstract 要約

論文の要点をまとめた部分になります。
「Abstract」は200~300語くらいの長さにするのが一般的です。
提出先によって決められている場合もありますので確認しましょう。

多くの人はこの部分を読んで、論文にどんなことが書かれているのかを把握します。
重要でないと判断されれば、その先を読まずに終えることもめずらしくありません。
その為、論文でもっとも重要で伝えたいことを盛り込む必要があります。

「Abstract」には本文中にある情報だけを記載します。
実際に論文を執筆していく際には、他の部分を先に書いた後で最後に「Abstract」に内容をまとめるのが良いでしょう。

その他の注意点として「Abstract」には図表や略語、引用文献は記載しないので覚えておきましょう。

既存の事実を記載するので時制については現在形で記載するのが一般的です。

Introduction 序論

「Introduction」では研究の背景、目的、方法について書きます。
過去に行われてきた研究を受けて、今回の論文の発表がどのような位置づけであるのかを伝える部分です。

研究テーマの背景となる幅広い知識を示し、その分野で明らかにされていることと、課題になっている部分を示していきましょう。

その課題を解決する重要性となぜ今まで解決されていないのかについても言及します。
最後に研究が社会に与える意義とメリットをまとめます。

「Introduction」は現在の事実を伝えていく内容なので時制は現在形で書いていきます。

Material and Method 材料と方法

「Material and Method」では研究の対象と研究の方法についてまとめていきます。
実験を行った場合は、装置、薬品、製造会社などの情報を記載します。
理由があれば、その手法をなぜ採用したか記載しましょう。

過去に実施した研究について執筆するので時制は過去形での記載となります。

Results 結果

実験、検証によって得られた結果を記載します。
データについては、図表や写真などを用いて正確に表します。
図表には簡単な説明と通し番号を付けましょう。

完了した実験結果について記載するので時制は過去形になります。

Discussion 考察

実験によって得られた結果をもとに、解釈や議論をまとめます。
他の研究と比較して何が違うのか、新しい課題は何なのか、今後の展開などを記載します。

Conclusions 結論

研究結果をまとめた内容を記載します。
「Result」には詳細な結果を書きますが、ここでは重要な項目だけをピックアップして記していきます。
その際は、同じ文章を引用するのではなく表現を変えて記載しましょう。

将来の研究に向けた提言や、社会に対して行動を促したい場合はこちらに記載することになります。

Acknowledged 謝辞

研究に協力していただいた方の名前を記載します。

具体的にはアドバイスをしてくれた方や、実際に研究や論文の執筆をサポートしてくれた方、実験機器を支援してくれた方などです。

補助金や支援金をもらった場合は、組織名や団体名なども記載しましょう。

Reference 参考文献

研究や論文を執筆するにあたって参考にした過去の研究や文献を記載します。
正しく記載しないと盗作となってしまう可能性があるため注意が必要です。

Appendices 付録

「Appendices」には本文に記載できなかった数式や証明、動画、画像などの情報を記載します。
番号を付けて本文中に言及しておくことで参照できるようにしましょう。

英語の科学論文でよく使われる表現方法

科学論文ではよく使われる言い回しや表現方法があります。
場面ごとに使い分けて、自然な表現になるようにしましょう。
代表的なものをいくつか紹介していきます。

【目的を表現する】
The main objective of this paper is A. / この論文の主な目的はAである
The purpose of this study is A./ この研究の目的はAである。
This study provides A./ この研究はAを提供する。

【結論を表現する】
All things considered / 全体を考慮して
All in all / 全体的にみて
In conclusion / 結論として
To sum up / 要約すると

【図表を表現する】
Table A shows B / 表AはBを表している
The graph A indicate B / 図表AはBと示している

【例を表現する】
For example A / 例えば A
For instance A / 例えばA
One example of A is B / Aの一例としてBがある

【接続詞の表現】
therefore / それゆえに
thus / それゆえに
however / しかしながら
moreover / そのうえ
alternatively / そのかわり
despite this / それにもかかわらず
nevertheless / それにもかかわらず
primarily / 第一に

発想力を鍛えて精度の高い科学論文を執筆しよう

英語で科学論文を執筆していく場合、ふだん使っている言語とは異なるため「英語の発想」が必要となってきます。
精度の高い科学論文を執筆していこうとした場合、英語の発想力を鍛えていくことが求められるでしょう。

英語の発想で文章を考える

英語で科学論文を書くにあたって、まずは日本語で文章を作成していく人もいらっしゃるかもしれません。

しかし、日本語と英語では文章の構成だけでなく表現方法や言い回しなども異なるため、直訳すると違和感のある表現になってしまいます。

日本語で考えて英語に変換する、という思考を変えてはじめから英語で発想できるようになれば自然な文章がかけるようになります。

英語的発想・表現力を磨く方法

英語の発想力を鍛えて、表現力を磨いていく方法についていくつかご紹介させていただきます。
はじめのうちは難しくても、訓練することによって誰でも英語の発想を身につけることは可能です。
コツコツと継続していくことが一番の近道だと言えるでしょう。

毎日英語に関わる環境に身を置く

ちょっとした短い時間でも毎日英語に関わることが大事です。
一番のおすすめは、ネイティブの友人をつくることです。

しかし、近くに英語を話す人がいなくて難しい場合もあるでしょう。

おすすめとしては、オンライン英会話やアプリを使用した英会話レッスンであれば自宅でも毎日続けることが可能です。

海外にいる講師とオンラインでレッスンする場合は、時差を利用して24時間いつでも自分の都合に合わせて受講できます。

自分に合ったものを探して継続していきましょう。

論文をたくさん読む

自分の研究分野で発表されている論文があれば、過去のものをたくさん読んでいきましょう。

科学論文は構成がある程度決まっているため、慣れてくれば読むスピードも上がっていき自分が執筆する際にもスムーズになります。

おすすめとしては、紙で印刷した論文に直接メモを書き込みながら読んでいく方法です。
実際に手を動かしてメモをとることで、定着率が上がりやすいと一般的に言われています。

参考となる言い回しや表現方法が出てきたら自分の論文にも取り入れていきましょう。

専門家の添削を受ける

自分一人で学習する方法にも限界があるかもしれません。
そのような場合は、プロに依頼をして論文を添削してもらう方法があります。

研究所などの同僚や先輩、大学院の教授など身近にいる方にお願いする場合、忙しいなか時間を作ってもらうのでお願いしづらい事もあるでしょう。

オンラインの添削サービスを利用すれば、専門分野に特化した実績と経験のあるネイティブの講師が論文を添削してくれます。

実際に専門分野の研究や論文の執筆経験のある講師がいるので、研究分野にそった論文の書き方をレクチャーしてもらうこともできます。

基本的な英語の文法や表現方法だけでなく、専門分野の表現方法や論文の組み立て方を最短で学んでいきたい人におすすめといえるでしょう。

まとめ

科学論文は自分の研究を世の中に向けて発信していくものであり、できれば多くの人に読んでもらいたいものです。
英語で表現することで、世界中の人に読んでもらえるでしょう。

はじめは難しく感じるかもしれませんが、英語の科学論文は構成が決まっているので書き方の傾向をつかむ事ができるはずです。

英語の発想力を鍛えて、思い通りの表現ができるように継続して訓練していきましょう。

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