経済学の英語論文の書き方を学ぶ!

経済学の英語論文の書き方は、一般的な英語論文の書き方と違いがあるのでしょうか。
この記事では、まず英語論文の一般的な注意点として、英語論文の構成にしたがって書くこと、論理的一貫性を保ち簡潔に書くこと、英文スタイル等についてご紹介します。

次に、経済学の英語論文にはどのような特徴があるのか、経済学の論文を執筆する時のポイントとして、経済学の英語論文の構成、間違えやすいポイントなどをご説明します。

英語論文を書く時の一般的な注意点

英語論文の書き方の一般的な注意点として、次のような点が挙げられます。

  • 英語論文の構成に従って書く
  • 論理的一貫性を保つ
  • 簡潔に書く
  • アカデミックイングリッシュで書く

以下で詳しく見ていきましょう。

英語論文の構成に従って書く

英語論文では、読み手に研究成果が正しく伝わるよう論文構成がほぼ決まっています。
研究分野により多少異なりますが、一般的な英語論文の構成は以下のようになっています。

【一般的な英語論文の構成】
Title(タイトル)
Abstract(要旨)
Introduction(序論)
Method(研究方法)
Result(研究結果)
Discussion(考察)
Conclusion(結論)
References(参考文献)

「要旨」は通常1段落で書き、英語論文全体の内容を端的に説明します。
この「要旨」を見て論文の本文を見るかどうか判断されるので、大事な部分です。

「序論」では研究分野の背景の説明や先行研究の紹介をした後、当該論文の研究課題を明らかにします。
研究分野全体の広範な話から、本論文の研究課題というピンポイントな話へと、徐々に話題を絞り込んでいきます。

「研究方法」で研究のプロセスを明確に記載し、「研究結果」で研究の結果を、「考察」で研究結果から導き出せる推察などを書きます。「結論」で研究の結果などをもう一度まとめます。

英語論文では論理的一貫性が大事

英語論文は「論理的一貫性」が大事と言われますが、このことは、上記の論文構成からも分かるように論文全体にも当てはまりますし、段落単位、文単位でも当てはまります。

英語論文では「1トピック1パラグラフ(段落)」で書くことが原則とされ、1つのパラグラフに2つ以上のトピックを含めて書きません。
各パラグラフの1文目には「トピックセンテンス」と言うその段落の要旨を表す文が書かれ、それ以降はトピックをサポートする根拠や具体例を表す文が続きます。

パラグラフとパラグラフ、文と文は、それぞれの論理的なつながりが分かるよう、「つなぎ言葉」と言われる副詞(句)を使って書きます。

「つなぎ言葉」の例としては、”However”(しかしながら), “Therefore”(それゆえ), “Also”(また)、”First/Second/Last”などがあります。

英語論文は簡潔に書く

英語論文の大事な役割は研究結果を読者に正しく伝えることなので、明瞭で簡潔な英語で書くのが良いとされています。
簡潔な英語にするための工夫の例として、受動態より能動態を、名詞より動詞を、冗長な語句より簡潔な語句を選ぶようにすると良いでしょう。

受動態より能動態を選ぶ

X was found. → We found X.
(我々はXを発見しました。)

名詞より動詞を選ぶ

The increase of X was dramatic. → X increased dramatically.
(Xは急激に増加しました。)

簡潔な語句を選ぶ

In addition → Additionally / Also
(さらに)

英語論文はアカデミックイングリッシュで書く

英語論文では、会話文やカジュアルな英文とは異なるフォーマルな英語、いわゆる「アカデミックイングリッシュ」で書きます。

使われる単語の種類や構文などが会話文やeメールなどとは異なるので、同じ研究分野の英語論文を数多く読み、使われている語句や文体に慣れておくと良いでしょう。

経済学の英語論文の特徴

ここまで英語論文の一般的な書き方についてお話してきました。
それでは、経済学の英語論文の書き方にはどんな特徴があるでしょうか。
基本的な書き方は一般的な英語論文と同じですが、経済学の論文ならではの特徴や注意点があります。

「経済学」と一口に言っても、経営学、会計学、企業論、応用経済学、計量経済学、マーケティングなど広範囲にわたります。
このため、研究分野と同じ分野、または投稿予定のジャーナルの既出論文を参考にすることは欠かせません。

本記事では、経済学の英語論文の書き方について、全般的に注意すべき以下の点についてご説明します。

  • データ・統計を多く扱う
  • 結果に影響を与える要因が多い
  • 専門用語が多い

経済学はデータ・統計を扱うことが多い

経済学はその研究内容から、必然的に数字を含んだデータや統計を扱うことが多くなります。
データや統計手法の信頼性を確保するため、特に以下の点に注意しましょう。

引用するデータは、必ず一次情報を使います。
一次情報を引用した記事や論文(二次情報)から引用した場合、二次情報のデータが間違っていることは大いにあり得ます。

必ず引用元までさかのぼり、一次情報から直接データを取得するようにします。
また資料の取得先を記録して記載することも忘れないようにしましょう。

経済学の英語論文では、アンケート調査を実施したり、回帰分析など統計手法を採用したりすることがあります。
この際、なるべく先行研究でよく使われており、ほぼ確立されたアンケート調査票や統計手法を採用するようにしましょう。

また、統計結果は図表等を使い分かりやすく英語論文に記載します。図表の説明でよく使う「増加/上昇する」、「減少/下落する」を表す動詞は以下のとおりです。

増加/上昇する 減少/下落する
increase decrease
rise drop
skyrocket plummet
go up go down

あまり変動がない時は、”stay flat”や”fluctuate”などが使われます。

経済学の英語論文では結果に影響を与える要因が多い

経済学は人間の経済・社会活動の営みに関連する事象の研究であるため、結果に影響を与える要因が多数考えられます。
経済学の英語論文では特定の要因の影響だけを研究対象とし、その他の要因を一定とすることが多いため、条件設定を明確に記載することが大切です。

また、経済学はそれぞれの要因が複雑に関連し合っているため、研究結果の信頼性を確保するため「定量分析」(quantitative analyses)だけでなく、「定性分析」(qualitative analyses)を併用することがあります。

定性分析を行った場合は、研究対象または参加者の属性を明確に記すようにします。

経済学の英語論文は専門用語が多い

経済学の英語論文は専門用語や、政策名・政府機関などの固有名詞が多いのが特徴です。

専門用語に関しては、単純に日本語を英訳すると誤りとなる可能性があるため、必ず英語の正式名を専門辞書などで探して書くようにしましょう。

固有名詞はそっくりそのまま記載し、大文字・小文字、アメリカ英語・イギリス英語なども変更しません。

英語で経済学の論文を執筆する時のポイント

英語で経済学の論文を書く時のポイントとして、論文構成や間違えやすい点を見ていきましょう。

経済学の英語論文の構成と書き方

経済学の英語論文の構成は、一般的な英語論文の構成と基本的に変わりません。ただ、「序論」の中に「文献レビュー」の項目を別途入れることがあること、各構成部分の書き方で注意すべき点があります。以下で詳しく見ていきましょう。

Title(タイトル)

タイトルを見ただけで、何についての英語論文か分かるようにします。

Abstract(要旨)

「要旨」はジャーナルの査読者が最初に読む部分であり、読者が論文の本文を読み進めるか決める部分でもあります。要旨は論文構成の最初に位置しますが、執筆するのは論文を一通り書き終えた後にするのが良いでしょう。経済学の英語論文の要旨は5文前後・150ワード前後が多く、ジャーナル投稿規定で決められている場合もあります。

経済学の英語論文における「要旨」の書き方は一般的に、「序論」のまとめ、「研究方法」のまとめ、「結果」のまとめ、「考察」のまとめの4つの部分から構成されます。研究結果や研究の成果を強調し、論文に興味を持ってもらえるような書き方を心がけましょう。

Introduction(序論)

「序論」では研究分野の背景知識を説明し、論文本文を読みやすくする働きがあります。たとえば、世間でも注目されている経済的問題を提示し、その概要と重要性について説くところから書き始めることもあります。
例)Surging housing price is one of the most pressing issues in Japan.
(高騰する住宅価格は、日本において最も差し迫った問題の1つです。)

上の文のような大きな問題を背景とした個々の課題の内、まだ十分に研究されていない課題を明らかにし、本研究の研究課題を明示します。
例)Few literature in economics conducts surveys on how many first-time buyers have been forced to change housing areas of their choices.
(どれだけ多くの住宅購入者が、希望の住宅エリアを変更せざるをえなかったかについて、調査を行った文献はほとんどない。)
例)In this study, we explore …
(本研究で我々は・・・)

「序論」では、研究結果、論文構成にも言及します。
例)We find that …
(我々は・・・を発見した。)
例)This article proceeds as follows. First, … Second, … Finally, …
(本論文は以下のように構成されています。第一に・・・、第二に・・・、最後に・・・)

なお、経済学の英語論文は「序論」に”Literature Review”(「文献レビュー」)を入れることが多いのが特徴です。「文献レビュー」を入れる場合、経済学系の論文では「序論」の中ほどに、経営学系の論文では「序論」の最後に入れることが多いようです。文献レビューにおいて、主要ジャーナルの論文は外さないようにしましょう。

文献レビューでは、各論文について研究の理論・対象・条件、データ収集・分析方法などについて記述します。また、「クリティカル・シンキング」(批判的思考法)によって文献を読み込んだ上で、その論文の限界、つまり十分に研究されていない部分などを指摘します。

クリティカル・シンキングと言っても、ただ先行研究を批判すると言うことではありません。各論文を様々な角度から分析し、その論文では十分研究されなかった分野などを明らかにし、自分の論文の研究課題に新規性や独自性があることを強調することにつなげます。

「序論」の研究分野の背景や文献レビューでは、現在も真実であると見なされていることについて記載するので、動詞の時制は現在形が多く使われます。

Method(研究方法)

「研究方法」では、研究の条件や分析方法を明示します。経済学の英語論文では以下のような順番で書くことが多いです。

  1. 調査対象
    例)The average age of the participants was …
    (参加者の平均年齢は…)
  2. データ収集方法
    例)The survey was conducted in *** City.
    (当調査は***市で実施されました。)
  3. データ分析方法
    例)*** (統計ソフト名) was used for analyzing the data.
    (このデータを分析するために、***ソフトが使用された。)
  4. 実証モデルの構築
    特に「計量経済学」の論文では、研究の目的が「実証モデルの構築」であることが多いです。まず定番の実証モデルを示した後、そのモデルをいかに発展させていったかを説明しましょう。

「研究方法」は他の研究者が同じ研究を再現できるように、詳細に書くのがコツです。特に統計データは読み方によって受ける印象が変わってしまうので、前提条件をはっきり書きます。

Result(研究結果)

「研究結果」を客観的に記述します。経済学の「研究結果」は、主に以下の3つの部分に分けて記載します。

  1. 何を分析したのか
  2. 分析手法と結果
  3. 結果の説明

例)The difference in *** is significant.
(***における違いは大きい。)

「研究結果」は図や表を入れて分かりやすく書くよう心がけ、また文章でも説明します。
例)The graph 2 shows that X increases dramatically due to Y
(グラフ2は、XがYにより急激に増加していることを示している。)

経済学の英語論文でよく使うグラフの種類には、以下のようなものがあります。
棒グラフ(a bar graph)
線グラフ(a line graph)
円グラフ(a pie chart)
度数分布図(a frequency histogram)
散布図(a scatter plot)

なお、「研究方法」と「考察」の章は筆者が既に行ったことについて書くので、動詞の時制は過去形が多く使われます。

Discussion(考察)

経済学の英語論文では、「考察」は主に以下の3つの部分で構成されます。

① 研究成果の考察
研究結果についての考察や本研究課題への解答を記述します。
例)The aim of this paper was to …
(本論文の目的は…)
例)We revealed how many …
(我々はどれだけ多くの…か明らかにした)

② 研究分野への貢献
次に研究領域への貢献度などを記載します。
例)This study contributes to …
(本研究は…に貢献する)
例)Out findings help us to understand …
(我々の発見は…を理解するのに役立つ)
例)Our results could be generalized to other areas.
(我々の研究結果は他分野にも一般化できる)

③ 今後の研究課題
最後に、当研究の限界(当研究はある特定の条件では適用できるが、他の条件では当てはまらないなど)にも触れ、今後の研究課題について言及しましょう。
例)The available data was limited …
(入手可能なデータは限られており…)
例)Further in-depth analysis should be developed.
(さらに綿密な分析がなされるべきである。)

Conclusion(結論)

「結論」では論文の成果をまとめます。ただし、経済学の論文では必ずしも「結論」の章を別途設ける必要はありません。
例)In conclusion, our hypothesis was supported by the results.
(結論として、我々の仮説は研究結果によって裏付けられた。)

References(参考文献)

参考文献は本文中に記載したものだけを書きます。文献から一言一句引用した場合は、本文中にかっこ書きで文献名・著者名・発行年に加えてページ番号も書くのが一般的です。

経済学の英語論文を書くときに間違えやすい点

以下で、経済学の英語論文を書く時に間違えやすい点をご説明します。

画期的な研究でないといけない?

英語論文では先行研究とは異なるオリジナルの研究課題を設定すべきとされていますが、必ずしも通説を覆すような画期的なことを発表しなければならないわけではありません。先行研究を踏まえた上でまだ十分に研究されていない課題を見つけ、その中から英語論文の研究課題を設定することが大切です。

同じ研究分野の専門家だけが理解できれば良い?

経済学の英語論文は専門的な内容ではありますが、専門外の人が経済学の英語論文を読む可能性も十分あります。専門家だけが理解できるような書き方でなく、専門外の人も理解できるように書いた方が多くの人に読まれる可能性が高まります。また、優れた英語論文というのは、専門外の人が読んでも理解できるように書かれています。

結果と考察を同じ場所に書いてよい?

研究結果を書く時に筆者の考察も同時に書いてしまいがちですが、英語論文の構成からも分かるように、英語論文では客観的な事実(研究結果)と筆者の考察を明確に区別します。上述した英語論文の構成の中で、「結果」には研究から得られた客観的な事実だけを記述し、「考察」にその結果から筆者が導き出したことを記載します。

まとめ

本記事では、経済学の英語論文の特徴や書き方をご説明してきました。
経済学の論文を英語で書くことは、最初の内は難しく感じるかもしれません。経済学の英語論文の書き方の基本を学んだ上で、同じ研究分野の英語論文を数多く読むのが一番です。

なお、英語論文の完成度を上げるためには、英文添削サービスが役立ちます。英文添削サービスに依頼すると、

  • スペル・英文法の誤りがないか
  • 投稿規定に遵守しているか
  • 簡潔な英文で書かれているか

などの観点から校正してもらえて、また研究結果で重要なところなどがより目立つような英文に直してもらうことができます。

英文添削サービス会社を選ぶ時は、経済学の研究分野に詳しい校正者がいる会社を選ぶことが不可欠です。
単純な英語の修正だけでなく、内容まで踏み込んだ校正をしてもらえ、ジャーナルにアクセプトされやすいようアドバイスを受けることができます。

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