英語論文の構成と各構成部分の書き方

英語論文を書く時は、日本語論文との違いを知っておくことが大切です。
英語論文と日本語論文の違いの一つに、論文構成があります。
英語論文の標準的な「構成」はどのようなもので、「構成」にしたがって書くことのメリットは何でしょうか。

この記事では、英語論文全体の構成と「IMRAD(イムラッド)」形式について説明し、各構成部分の内容と書き方について解説。

また、英語論の書き方のコツもご紹介します。

英語論文には一般的な構成がある

英語論文には学術分野を問わず標準的な構成があり、それぞれの構成部分で書く内容もほぼ決まっています。
英語論文の標準的な構成にしたがって書くとどのようなメリットがあるのか、以下でご説明します。

英語論文の構成にしたがって書くメリット

英語論文の一般的な構成にしたがって書くと、読者が内容を理解しやすく、ジャーナルにアクセプトされやすくなるというメリットがあります。

読みやすい英語論文になる

共通の構成にしたがって書かれた英語論文は、英語論文を読んだことのある読者にとって慣れたフォーマットであるため、読みやすくなります。

読みやすい英語論文の方が、最後まで読んでもらえる確率が高いです。

また、読者が特定の情報を求めて英語論文を読む場合、共通の構成にしたがった英語論文であればどこに何が書いてあるかすぐ分かり、必要な情報を探しやすくなります。

ジャーナルへの論文採択率に影響し得る

英語論文の構成次第で、ジャーナルへの論文採択率も左右される可能性があります。

もし英語論文を独特な構成にしたがって書いた場合、英語論文の書き方を知らないと判断されてしまうこともあります。

ジャーナルの編集者は大量の英語論文を読む必要があります。
それぞれの英語論文が同じフォーマットに従って書かれていた方が、読みやすく比較しやすいのです。

後述しますが、ジャーナルの「投稿規定」で英語論文の構成が定められている場合もあります。

英語論文はどのような構成で書かれているのか

英語論文の標準的な構成を学び、習熟しておくと、英語論文は書きやすくなります。
最も広く使われている英語論文の構成を、以下で解説します。

英語論文全体の構成

英語論文全体の構成は、下の表のとおりです。
最初に英語論文の「タイトル」、次に英語論文の「要旨」。

英語論文の本文に当たる部分は、「序論」→「方法」→「結果」→「考察」の順番です。
次に「結論」、「謝辞」、「参考文献」、「付録」と続きます。

【英語論文の構成】

各構成部分 内容
Title タイトル 英語論文のタイトル
Abstract 要旨 英語論文の要旨
Introduction 序論 英語論文の本文 -「IMRAD(イムラッド)」
Methods 方法
Results 結果
Discussion 考察
Conclusions 結論 研究の結論
Acknowledgement 謝辞 研究に貢献した人の名前
Reference 参考文献 研究にあたって参考にした文献のリスト
Appendices 付録 本文に載せられなかった詳しいデータや図表

「タイトル」は何について書かれているのか分かるようキーワード含んだ簡潔なものにします。
「Abstract(要旨)」は、300単語程度で研究の背景・目的・方法・結果を簡潔に述べます。

読者はまず要旨を見て、その英語論文を読むかどうか判断するので、「要旨」は大事な部分です。

英語論文の本文に当たるのが「Introduction(序論)」、「Methods(方法)」、「Results(結果)」、「Discussion(考察)」の部分で「IMRAD(イムラッド)」形式と呼ばれています。

次項で詳しくご説明します。

本文の後にくる「Conclusions(結論)」では、研究結果の中で最も重要なものを簡潔にまとめ、本研究の限界と今後の課題を明らかにします。

「Acknowledgement(謝辞)」では著者以外に本研究に貢献した方の名前を記し、「References(参考文献)」で研究に当たって参照したすべての文献のタイトル、著者名、発行年などを記載。

「Appendices(付録)」では、本文に載せきれなかった図表、写真などを掲載します。

学術分野によって、「Conclusions(結論)」に書く内容を「Discussion(考察)」に含める、「Methods(方法)」ではなく「Materials and Methods(材料と方法)」とするなど、多少の差はあるものの、英語論文の構成はおおむね上の表のとおりになっています。

英語論文の「IMRAD(イムラッド)」形式とは?

英語論文の本文に当たる「IMRAD(イムラッド)」は、「Introduction(序論)」、「Methods(方法)」、「Results(結果)」、「Discussion(考察)」のそれぞれのアルファベットの頭文字を取って名付けられました。

「IMRAD(イムラッド)」形式は20世紀始めに提唱され、20世紀後半に定着。
現在では、英語論文の標準的な構成と見なされています。

ある研究者によると、「IMRAD(イムラッド)」形式がこれほど広く普及した一因として、ジャーナルの編集者達の要望があったそうです。

投稿された英語論文がIMRAD形式で統一されていると、査読の際に内容の解釈や英語論文の比較が容易になるためです。

「IMRAD(イムラッド)」の各構成部分ではどのような内容を書き、どのような書き方をしたら良いのか、以下で見ていきましょう。

IMRADの各構成部分の内容と書き方

「IMRAD(イムラッド)」形式による英語論文の構成は、よく砂時計の形に例えられます。

前半部分で専門分野の概要を広く紹介し、中間部分で本研究についての話に絞り込み、後半部分で再び専門分野全体の話へと広げる形になっているためです。

前半部分が「Introduction(序論)」、中間部分が「Methods(方法)」と「Results(結果)」、後半部分が「Discussion(考察)」です。これら英語論文の4つのセクションで書くべき内容と書き方について、以下で詳しくご説明します。

Introduction(序論)の内容と書き方

「Introduction(序論)」の書き始めは研究の背景。先行研究を紹介しつつ研究分野全体の概要に触れ、研究が十分でなかった部分で、今後解決すべき課題を指摘。

次に、本研究の目的を明示して、英語論文の構成についてもご説明します。

専門分野の概要や、研究の課題について書く際に使われる例文は以下のとおりです。

Recently, there has been increasing interest in …
(近年、・・・の分野にますます注目が集まっている。)

Several studies have found that …
(複数の研究が・・・を発見した。)

There is a relative lack of studies investigating …
(・・・を調査する研究は比較的少ない。)

研究の目的とその重要性について書く際に使われる例文は以下のとおり。

This study aims to address the following research questions.
(当研究は次のリサーチクエスチョンを対象としている。)

This is the first study to …
(当研究は・・・を初めて研究するものである。)

最後に、本英語論文がどのような構成になっているか説明します。

The overall structure of the study takes the form of six chapters.
(本英語論文は6章に分かれています。)

「Introduction(序論)」で研究の背景や先行研究について触れる際は、現時点の研究分野の状況等について触れるので「現在形」が多く使われます。

Methods(方法)の内容と書き方

「Methods(方法)」では、当研究を行うに当たって採用した方法やデータの統計処理法をご説明します。

「Methods(方法)」は他の研究者が再現できるよう、詳細かつ明確に書くべきと言われています。
実験や調査が再現できなければ、その結果についても妥当性を証明できないためです。

「Methods(方法)」で使われる例文は以下のとおり。

A case-study approach was adopted to help understand …
(・・・の理解に役立つよう、事例研究によるアプローチを採用した。)

Participants were recruited from …
(参加者は・・・から募集された。)

The participants were asked to rate …
(参加者は・・・を評価するよう求められた。)

The data were normalized using …
(当該データは・・・を使用して標準化された。)

実際の実験や調査の手順については、「First(最初に)」、「Second(次に)」などの副詞を使って時系列に書きます。

「Methods(方法)」のセクションは、既に行った実験や調査・研究の方法について説明するため、「過去形」が多く使われます。

Results(結果)の内容と書き方

「Results(結果)」では、以下の例文のように当該研究の結果を書きます。

Table 1 shows an overview of …
(表1は・・・の概要を示している。)

It is apparent from this table that …
(この表から・・・は明らかである。)

Interestingly, the X was observed.
(興味深いことに、Xが観測された。)

There were 100 responses to the question.
(当該質問には100の回答があった。)

A majority of participants indicated that …
(参加者の大多数が・・・と述べた。)

Overall, these results indicate that …
(概して、これらの結果は・・・を示唆している。)

「Results(結果)」のセクションも、既に出ている結果について書くため、「Methods(方法)」と同様「過去形」を使います。

定量的研究では特に、図や表を使って分かりやすく書くのがポイントです。

図表はすべて番号を振り、タイトルを付けます。
図表に示されたデータの内、重要なものについては文章中でも触れコメントします。

Discussion(考察)の内容と書き方

「Discussion(考察)」は、英語論文の肝と言ってもいい重要なセクションです。
英語論文の「Results(結果)」で述べた研究結果を深く分析し、そこから得られる理論や推測を書きます。

また、当該研究の結果が研究分野全体の中でどのような位置づけにあるのかについても触れます。

This finding was unexpected and suggests that …
(当研究結果は予想外であり、・・・を示している。)

This finding is contrary to previous studies.
(当研究結果は、以前の研究結果と相いれないものである。)

This interesting result could be due to …
(この興味深い結果は・・・が原因かもしれない。)

It can therefore be assumed that …
(それゆえ、・・・と仮定し得る。)

The understanding gained here should help to …
(本研究で得られた理解は、・・・するのに役立つはずだ。)

「Discussion(考察)」は現時点での分析や推測について書くため、「現在形」で書くことが多いセクションです。

英語論文の書き方のコツ

前項まで、英語論文の構成や各構成部分で書く内容と書き方についてお話しました。
ここからは、英語論文を書く際のコツをご紹介します。

ジャーナルの投稿規定を真っ先にチェックする

英語論文を書き始める前に、まずジャーナルの投稿規定をチェックしましょう。

ジャーナルの投稿規定には英語論文の構成ついて定めがある場合がある他、ワード数、引用文献の数、イギリス英語またはアメリカ英語などについて決められています。

ジャーナルの投稿規定をよく読み込んでから、英語論文を書き始めることが大切です。

投稿規定を一通り理解したら、実際にジャーナルに掲載された英語論文をいくつか読んでみましょう。

投稿規定に明示されていること以外にも、そのジャーナルでよく使われている文体や構文、キーフレーズなどを把握することができると、より英語論文を書きやすくなります。

IMRAD形式に基づき英語論文の構成を決める

ジャーナルの投稿規定に別段の定めがなければ、英語論文の構成は「IMRAD(イムラッド)」形式を採用します。
「IMRAD(イムラッド)」の各構成部分で書く内容、たとえば「Introduction(序論)」では、研究の背景、研究の目的、英語論文の構成などを書く必要があるので、漏れのないようあらかじめ構成に含めておくと良いでしょう。

英語論文を標準的な構成にしたがって書くことで、英語論文は書きやすくなります。

英語論文は書きやすい部分から手を付ける

英語論文を書く順番は、英語論文の構成の順番通りである必要はありません。

たとえば、「Abstract(要旨)」や「Introduction(序論)」は、英語論文の構成の中で最初の方に位置していますが、実は書くのが難しいセクションです。

一方、「Methods(方法)」と「Results(結果)」は、自ら行った実験や調査について客観的に書くので、比較的書きやすい部分です。

特に、「Methods(方法)」や「Results(結果)」で作成する「図表」は、英語の文章ではなくデータ等を書くだけ。

先に図表を完成させておくと、英語の文章を書く時は図表のデータ等を見ながら書けるため、書きやすいというメリットもあります。

英語論文の各構成部分で書く内容を決める

英語論文の構成が決まったら、具体的にどこに何を書くのか、箇条書き等で記しておきましょう。

英語論文はボリュームがあるので、英文を書くのに集中しているうちに、次に何を書く予定だったか忘れてしまうこともあります。

英語論文は、「1パラグラフ1トピック」の原則で書きます。
「パラグラフ」は「段落」のことです。
1つのパラグラフで1つのトピックについてのみ書き、2つ以上のトピックを同じパラグラフに含めません。

各パラグラフのトピックを箇条書きで書いておくことで、トピックの抜け漏れが起こりにくくなります。
あとは、各トピックについて、パラグラフ内で「サポートセンテンス」を書き足していきます。

最初から完璧な英文を書かなくても良い

英語論文の執筆は、内容が専門的である上に非母国語で書くことから、慣れないうちはとても難しい作業に感じることもあるでしょう。

最初から完成形の英語で書こうとすると、なかなか執筆が進みません。

最初は、自身の基準で6~7割の完成度でいいと割り切り、とにかく執筆を進めることを目標にしましょう。

その際、書くべき内容は過不足なく書き(最初は箇条書きでも可)、自分が後で読んだ時に理解できる程度の英文を書いておきます。

英語自体のブラッシュアップは、後からいくらでもできます。

英語論文を書くのに慣れたネイティブの研究者でも、執筆作業を難しく感じる時があります。

まずは短い時間(たとえば15分間など)を設定して、その間はとにかく書き続ける、といった方法も試してみると良いでしょう。

英語論文のファイルはこまめに保存する

英語論文の書き方そのものではありませんが、英語論文執筆中は、ファイルを頻繁に保存するのがコツです。

英語論文に図表などを入れるとファイルが重くなり、フリーズしたり、ファイルが破損したりすることもあるためです。

執筆に熱中していると、ファイルを保存しておくのを先延ばしにしてしまいがち。

ただ、せっかく書いた英語論文のファイルが破損して、前回保存した時以降に入力した英文が消えてしまうと、時間のロスが大きいです。

執筆中に切りのいいところまで来たら、常に「上書き保存」する習慣を付けることをおすすめします。

キーボード上で「上書き保存」するには、「Ctrl」キーと「S」キーを押します。この方法なら、執筆の手を止めずにこまめに保存できます。

英語論文の書き方のコツについては、以下の記事でも詳しく解説しているのでご参照ください。

初めて英語論文を書く方向け!|英語論文の書き方と投稿前のチェックポイント

英語論文の最終チェックは英文添削業者に依頼しよう

母国語で書いた文章でも、見直すとミスが見つかるもの。
英語論文を書くのに慣れている方でも、最終チェックはプロの校正者にしてもらうことをおすすめします。

英語論文は専門的な内容であるため、自らの専門分野に詳しい校正者がいる英文添削業者に依頼すれば、英語の誤りだけでなく英語論文の構成が適切か、専門分野にふさわしい語彙が使用されているか、ジャーナルの投稿規定にしたがっているかなどについてもチェックしてもらうことができます。

まとめ

英語論文には分野を問わずほぼ共通の構成があり、英語論文を書く時にはこの標準的な構成にしたがって書くのが基本です。

読者やジャーナルの編集者にとって、読みやすい英語論文になります。

英語論文の構成のうち、本文に当たる部分は「IMRAD(イムラッド)」形式と呼ばれ、「Introduction(序論)」、「Methods(方法)」、「Results(結果)」、「Discussion(考察)」の4つのセクションに分かれています。

英語論文を書く際は、各構成部分で書くべき内容と書き方を知っていることが大切です。

英語論文は「Methods(方法)」や「Results(結果)」など書きやすい部分から書くのがコツ。

最初は最低限の内容だけ書いておいて、後で内容を膨らませたり英語をブラッシュアップしたりするのも良いでしょう。

英語論文を書き上げて自分で見直した後は、最終チェックを英文添削業者に依頼することをおすすめします。

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